本日8月2日、25日のアラガン社ブレストインプラント発売中止を受け、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会(JSAPS)より、正式発表が公開されました!
皆さんへシェアします!
納得、いかないに点や疑問点はありますが・・・現時点での正確な見解です。
それぞれの立場で、現状を正確に把握して対処してくださいね!
2019 年 8 月 2 日
「ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を希望されている方へ」
現在わが国で、健康保険を用いたブレスト・インプラントによる乳房再建の手術では、アラガン社のティッシュエキスパンダーとインプラントのみが認可されています。
2019 年 7 月 24 日、米国の厚生労働省にあたる FDA の指導のもとこれらの製品の全世界での自主回収が決定されました。これに伴い、日本でも流通が停止され、使用ができなくなりました。
その理由として、近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-
ALCL))という疾患が知られてきたことがあります。
この疾患はT細胞性のリンパ腫と呼ばれるもので、乳がんとは異なる悪性腫瘍です。ほとんどが表面の性状がザラザラ(テクスチャードタイプといいます)のインプラントを使用した症例で発生し、アラガン社のナトレル 410 もテクスチャードタイプに該当します。海外からの報告では、このインプラントが挿入されている方のうち約 3300 人に1人に発生するとされ、他社のテクスチャードタイプのインプラントと比較して、約 6 倍の発症リスクがあるとの情報があります。インプラントを入れてから平均 9 年ほどで発生し、多くの患者さんではインプラント周囲に液体がたまり、大きく腫れてくることではじまるとされています。日本では今年 1 例の報告がありました。
現時点では、日本国内で健康保険で扱うことができるブレスト・インプラントは存在しません。今後、乳房再建を希望されている方には、下記の選択肢が想定されます。
【乳癌手術前の方】
1.乳癌手術のみを行い、後で再建を行う(二次再建)
2.乳癌術式を再検討する(温存手術が可能であれば選択肢となり得る)
3.自家組織再建による(ティッシュエキスパンダーを使用しない)一期再建を行う
(施設の状況や各々の治療方針により困難な場合があります。)
4.二期再建の場合、KOKEN および PMT のティッシュエキスパンダー(乳房再建専用ではない、表面がつるつるのタイプ)を使用する(ただし、現在は安定供給ができておらず、入手困難となっています。)
【乳癌手術後の方】
1.自家組織再建をご希望の方は、上記3.4について検討する
2.インプラントによる再建をご希望の方は、
・KOKEN およびPMT のティッシュエキスパンダーを留置後に、9 月以降に販売再開となるアラガン社・ナトレル 10, 40 シリーズを用いる(ナトレル 410 とは異なり、表面がつるつるのスムースタイプであり、BIA-ALCL のリスクは限りなく低くなりますが、破損や被膜拘縮等の合併症は増加します)
・他種のエキスパンダーやインプラントが健康保険で認可されるまで待機する
・学会としては推奨いたしませんが、自費診療で国内では未承認である他種のテクスチャードタイプティッシュエキスパンダー、インプラントを使用する方法はあります(BIA-ALCL のほか、破損やその他の合併症について十分な説明を受けてください)
今回の決定により、患者様には多大なるご心配ご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。本学会としては一日も早くわが国にブレスト・インプラント再建を取り戻すよう、関係各所に緊密に連絡をとって対処していく所存ですので、ご理解を何卒よろしくお願い申し上げます。
* 内容に関して不明点がありましたら,日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会事務局(e- mail: jopbs-office01@shunkosha.com) までお問い合わせください。
「ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房手術を受けた方へ」
近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-ALCL))という疾患が知られてきています。この疾患はT細胞性のリンパ腫と呼ばれるもので、乳がんと は異なる悪性腫瘍です。
現在わが国の健康保険で許可され、乳房再建を目的として流通している唯一のインプラントである、アラガン社のナトレル 410, 110, 115, 120 は表面がざらざらのテクスチャードタイプで、
Biocell(バイオセル)という表面構造を持ち、この疾患のリスクを有するタイプに該当します。世界的には、このインプラントが挿入されている方のうち約 3300 人に1人(0.03%)にこのリンパ
腫が発生すると報告されています。日本では今年に入り 1 例の報告がありました。海外からの報
告では、このリンパ腫は、インプラントを入れてから平均 9 年ほどで発生する可能性があり、症状としてはインプラント周囲に液体がたまり、大きく腫れることで始まることが多いとされています。
BIA-ALCL を発症しても、多くの場合はインプラントとその周囲の組織を切除することで治癒す るとされています。一方で、発見が遅れた場合や切除しきれない場合には化学療法や分子標的薬、放射線治療等の追加治療が必要となり、死亡した例(米国での発症 573 例のうち 33 例・5.75%) も報告されています。
米国時間 7 月 24 日、米国の厚生労働省にあたる FDA の指導の下、アラガン社が全世界で、インプラント・ナトレル 410, 110, 115, 120 およびティッシュエキスパンダー・ナトレル 133 を含む Biocell を用いた製品の自主回収(リコール)を決定いたしました。
これに伴い、日本国内でも同 25 日より自主回収が開始されました。
乳房インプラントが挿入されている方については、FDA やそれよりも前に流通停止を決定していた EU、カナダにおいても、症状のない方に対する予防的なインプラントの摘出は推奨していません。腫れやしこりがないかを自分でチェックするように推奨しています。発症リスクは
0.03%と低く、手術に伴う出血等のリスクが上回ると考えられるためです。本学会としても同様の見解です。
学会では、インプラントの保険適用の際から、インプラントの破損(10 年で 10 人に 1 人の確率)や合併症の発見のために最低 10 年の定期的な診察と、2 年に 1 度の画像検査を推奨してまいりました。この BIA-ALCL においては、まれな疾患ですが早期発見が重要となりますので、10年以降も引き続き、自己検診と医療機関での定期検診の継続をお願いいたします。また、異常を感じた場合にも受診をお願いいたします。
Comments